スマホやゲームは悪?153本の大規模研究が示す「光と影」
📄 Digital Media Use and Child Health and Development: A Systematic Review and Meta-Analysis.
✍️ Teague, S., Somoray, K., Shatte, A., Miller, D., Moss, K., Crawford, A., Wildman, H., Kayal, D., Hutchinson, D.
📅 論文公開: 2026年1月
3つのポイント
- 1
SNSの利用は、うつや自己肯定感の低下といった、心の健康へのリスクと関連が見られました。
- 2
ビデオゲームは、攻撃性と関連する一面がある一方で、計画性や集中力(実行機能)を高める可能性も示唆されました。
- 3
これらの関連性は全体的に小さいものの、特に思春期初期の子どもたちで注意が必要な傾向があります。
論文プロフィール
- 著者・発表年: Teague, S. ら (2026)
- 掲載誌: JAMA Pediatrics
- 調査対象: 2000年から2024年に発表された、0歳から18歳の子どもと青年を対象とする153本の 縦断研究 縦断研究 同一の参加者を長期間にわたって追跡調査する研究デザイン。発達的変化の因果関係を検討できる。 。
- 調査内容: ソーシャルメディアやビデオゲームなどのデジタルメディア使用が、子どもの心身の健康や発達にどのような影響を与えるか、世界中の研究結果を統合して分析しました。
エディターズ・ノート
「スマホやゲームは子どもに良くない」という話をよく耳にします。でも、本当なのでしょうか? 漠然とした不安が広がる一方で、デジタルツールは今や生活の一部です。
今回ご紹介するのは、世界中から153本もの論文を集めて分析した、とても大規模な研究です。 デジタルメディアの「光」と「影」の両側面を冷静に見つめることで、ご家庭でのルール作りや関わり方のヒントが見つかるかもしれません。
実験デザイン
この研究では、 メタ分析 メタ分析 複数の研究結果を統計的に統合・分析する手法。個々の研究よりも信頼性の高い結論を導出できる。 という手法が使われました。 これは、過去に行われた複数の研究データを集め、それらを統計的に統合することで、より信頼性の高い結論を導き出す方法です。
今回は、153本もの研究結果を統合し、デジタルメディアの種類ごとに、子どもの発達の様々な側面とどのくらい関連があるかを分析しています。
| 項目 | 関連の強さ(相関係数 r の絶対値) |
|---|---|
| ゲームと攻撃性 | 0.16 |
| SNSとうつ | 0.11 |
| SNSと学業成績 | 0.1 |
| ゲームと実行機能 | 0.1 |
🔍 「関連がある」は「原因」ではない?
この研究で示されているのは、あくまで「相関関係」です。 例えば、「SNSの利用時間が長い子どもは、うつの傾向も高い」という関連が見られたとしても、 「SNSがうつの原因だ」と断定することはできません。
もしかしたら、「もともとうつの傾向がある子が、現実の交流を避けてSNSに没頭しやすくなる」という逆の可能性も考えられます。 このように、どちらが原因でどちらが結果なのか、あるいは別の要因(家庭環境など)が両方に影響しているのかは、この研究だけでは分からないのです。 結果を解釈する際には、この点を心に留めておくことが大切です。
🔍 効果量(関連の強さ)の読み解き方
グラフに示された数値(相関係数r)は、2つの事柄の関連の強さを示します。 一般的に、この値が0.1程度であれば「小さい関連」、0.3で「中程度の関連」、0.5以上で「大きい関連」と解釈されます。
今回の研究で報告された関連性は、ほとんどが0.1〜0.2の範囲に収まっています。 これは統計的には意味のある関連ですが、影響の大きさとしては「小さい」レベルだと言えます。 デジタルメディアが一人の子どもの発達に与える影響は、他にもたくさんある要因(家庭、学校、友人関係、本人の気質など)の中の一つに過ぎない、という冷静な視点も重要です。
古典知見との接続
この研究は、デジタルメディアが子どもたちの「学び」の環境をどう変えるか、という問いを私たちに投げかけます。
ロシアの心理学者ヴィゴツキーは、「 発達の最近接領域 発達の最近接領域 ヴィゴツキーが提唱した概念。子どもが一人ではできないが、大人の援助があればできる範囲のこと。 」という考え方を提唱しました。 これは、子どもが「一人ではできないけれど、大人や年上の子の助けがあればできる」領域のことで、この領域での挑戦こそが発達を促す、という考え方です。 この他者からのサポートを「 足場かけ 足場かけ 学習者の理解レベルに応じて適切な支援を提供し、徐々に支援を減らしていく教育的介入手法。 」と呼びます。
現代において、デジタルメディアは新しい「足場かけ」の道具になり得るのでしょうか。 例えば、学習アプリが子どものレベルに合わせて問題を出してくれたり、ビデオゲームが試行錯誤を通じて計画性( 実行機能 実行機能 目標志向的な行動を制御する認知プロセスの総称。抑制制御、ワーキングメモリ、認知的柔軟性を含む。 )を鍛える手助けをしてくれたりするかもしれません。 一方で、不適切なコンテンツやSNSでの過度な比較は、健全な発達の足場を揺るがす危険性もはらんでいます。 どのようなメディアが、子どもにとって「良い足場」になるのかを見極める視点が大切になります。
すくすくベリーとしての解釈
今回の研究結果は、デジタルメディアをひとくくりに「良い・悪い」と判断することの難しさと、その「使い方」の重要性を改めて示してくれました。 この視点は、すくすくベリーのプロダクト設計の根幹にある考え方と深く共鳴します。
プロダクトの思想(AI解析の視点) 私たちは、「スクリーンタイムの長さ」だけを測ることにあまり意味はないと考えています。 大切なのは、その時間の中で「子どもが何に触れ、何を考え、どう試行錯誤したか」という体験の質です。
今回の研究で、ビデオゲームが計画性や集中力といった 実行機能 実行機能 目標志向的な行動を制御する認知プロセスの総称。抑制制御、ワーキングメモリ、認知的柔軟性を含む。 とポジティブな関連を持つ可能性が示されたことは、非常に示唆に富んでいます。 すくすくベリーが目指しているのは、まさにこのような「遊びの質」の可視化です。 例えば、パズルゲームのログを解析し、「何度も試行錯誤しながら、より難しいレベルに挑戦している」という行動パターンを検出できたなら、それは実行機能が育っているポジティブなサインとして捉え、保護者の方にフィードバックすることができるかもしれません。
逆に、SNS利用とうつの関連が思春期に高まるという知見は、将来すくすくベリーがより高い年齢のお子さんをサポートする上で、心の健康を見守る機能の重要性を示唆しています。アプリ内での活動量の変化や入力される言葉の傾向から、心の不調のサインを早期に検知し、保護者にそっと寄り添うような仕組みを検討していきたいと考えています。
ご家庭でできること もし、お子さんのスマホやゲームとの付き合い方に悩んだら、まずは「メディアの種類」に注目して、一緒に会話をしてみてはいかがでしょうか。
「どんなゲームをしている時が一番楽しい?」 「この動画のどこが面白かった?」
ただ時間を制限するだけでなく、お子さんが何に夢中になっているのかに関心を持つことが第一歩です。 創造的なアプリで何かを作っている時間と、ただ受動的に動画を見ている時間とでは、お子さんの表情も頭の使い方もきっと違うはず。 その違いを観察し、「これは良い時間だったね」とポジティブな声かけをすることで、お子さん自身がメディアを主体的に選ぶ力を育むきっかけになります。
読後感
この研究は、私たちにシンプルな答えではなく、より深い問いを投げかけてくれます。 メディアとの付き合い方に唯一の正解はありません。 大切なのは、それぞれの家庭で、それぞれの親子関係の中で、対話を重ねていくことなのかもしれません。
あなたのご家庭では、お子さんのデジタルメディアとの付き合い方について、どんな喜びや、どんな悩みがありますか?