子育て論文研究室
発達心理学

発達の道すじは一つじゃない — 4〜5歳の子どもに見えた4つのパターン

📄 Longitudinal developmental profiles in 4- to 5-year-old Dutch children: a latent profile analysis.

✍️ Rosinda, SJ, Hoekstra, PJ, Hadders-Algra, M, Heineman, KR, de Bildt, A

📅 論文公開: 2026年1月

発達の多様性 縦断研究 乳児期 幼児期 運動・認知発達

3つのポイント

  1. 1

    オランダの4〜5歳の子ども518名を、乳児期からの発達をたどって調べた縦断研究です。

  2. 2

    発達の道すじは一つではなく、「典型」「早めに進む」「あとから追いつく」「つまずきがある」の4つのパターンに分かれていました。

  3. 3

    乳児期の様子から将来をぴたりと見通すのは難しく、発達は一人ひとり大きく異なることが示されました。

論文プロフィール

  • 著者 / 発表年 / 掲載誌: Rosinda, S.J. ほか(2026年)/European Child & Adolescent Psychiatry
  • 調査対象: オランダの4〜5歳の子ども。乳児期(生後3〜18か月)の神経・運動の評価をもとに703名を招待し、うち518名(74%)が参加しました
  • 調査内容: 乳児期の神経・運動の評価と、4〜5歳(就学前後)の運動・認知の評価を組み合わせ、 縦断研究 として発達の道すじを分析しました。あわせて、保護者が回答した行動・情緒の様子、自閉スペクトラム(ASD)傾向、注意・多動(ADHD)傾向との関連も調べています

エディターズ・ノート

「この時期にこれができていれば安心」という発達のものさしは、子育ての道しるべであると同時に、あてはまらないときに不安の種にもなりがちです。発達の道すじは実際にはどれくらい多様で、乳児期の様子から将来をどこまで見通せるのか——それを一人ひとりの歩みに寄り添って確かめようとした研究として、今の子育てに静かに効く一本だと考えお届けします。

実験デザイン

研究チームは、乳児期(生後3〜18か月)の神経・運動の様子から、発達が典型的とされた子どもと、そうではない(非典型的とされた)子どもの両方を招き、4〜5歳になった時点で運動と認知をあらためて評価しました。そのうえで、複数の評価をまとめて似たパターンごとに子どもをグループ分けする「潜在プロファイル分析」という手法を使いました。

その結果、発達の道すじは一つではなく、四つの多様なパターンに分かれていました。具体的には「典型的な発達」「早めに進む発達」「あとから追いつく発達」「つまずきがみられる発達」の4つです。「あとから追いつく」パターンの存在は、乳児期にゆっくりに見えても、その後の歩みは大きく変わりうることを示しています。

また、「つまずきがみられる」パターンの子どもたちは、保護者からみて行動・情緒の難しさやASD傾向・ADHD傾向がやや多めに報告されていました。性別や家庭環境との緩やかな関連も見られましたが、これはあくまで集団としての傾向で、一人ひとりの未来を決めるものではありません。

🔍 「潜在プロファイル分析」ってどんな方法?

潜在プロファイル分析は、一人ひとりの複数の評価データを見比べて、「似た特徴を持つ子ども同士」を自然なまとまり(プロファイル)に分けていく統計の手法です。

あらかじめ「この点数以上は◯◯グループ」と線を引くのではなく、データそのものの中から浮かび上がってくるパターンを探します。今回はそこから、発達の4つの道すじが見えてきました。

🔍 この研究の読み方(限界)
  • 性別や家庭環境との関連は「集団としての傾向」であり、その子の発達を予言するものではありません。個人差はとても大きいと著者も強調しています。
  • 行動・情緒やASD/ADHD傾向は保護者による回答をもとにしています。診断ではなく、あくまで日常での様子の報告です。
  • もっとも大切なメッセージは、著者自身が述べているとおり「乳児期の評価から将来をぴたりと見通すのは難しい」ということ。この研究も、その難しさをあらためて示したものです。

古典知見との接続

シェマ(子どもが世界を理解する枠組み) という考え方で知られるピアジェは、発達を段階を追って進むものとして描きました。その視点は今も子育ての大きな見取り図ですが、実際の子どもたちを縦断的に追うと、話はもう少し複雑です。

今回の研究が示したのは、同じ年齢でも歩みは四者四様で、しかも「あとから追いつく」道すじも確かにあるということでした。発達は一本道ではなく、行きつ戻りつしながら育っていく——段階という地図を手にしつつも、その子が今どこを、どんなペースで歩いているのかを丁寧に見ることの大切さを、この研究はそっと思い出させてくれます。

読後感

同じ年齢の子どもでも、育ちの道すじはこんなにも多様で、ゆっくりに見えた歩みがあとから大きく伸びることもある。そう知ると、「今どこにいるか」より「どんなふうに歩んできたか」に目が向いてきます。

今日、お子さんの姿を見て、少し前と比べてそっと変わったなと感じたことは、どんなことでしたか。