子どもの「実行機能」を育てる研究は、どこへ向かっているのか
📄 Trends and research patterns in executive function interventions for children and adolescents.
✍️ Kılıç, K. M., Kaytez, N.
📅 論文公開: 2026年1月
3つのポイント
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子どもと10代の実行機能(考えを保ったり切り替えたりする力)を育てる取り組みの研究692本を、2000年から2026年まで分析しました。
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研究の数は年12.42%のペースで増えており、特に2015年以降に伸びています。
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最近は、気持ちの調整や体を動かす活動など、暮らしに近いテーマへと研究の関心が広がっています。
論文プロフィール
- 著者 / 発表年 / 掲載誌: Kılıç, K. M.、Kaytez, N. / 2026年 / Child Neuropsychology
- 調査対象: 2000年から2026年に発表された、子どもと10代の実行機能を育てる取り組みに関する文献692本
- 調査内容: 研究の数の増え方、よく扱われるテーマの移り変わり、国や研究者どうしの協力のあり方
エディターズ・ノート
「集中力」「切り替え」「がまんする力」は、子育ての場で話題にのぼることの多い力です。この論文は個別の効果を調べた研究ではなく、研究の世界全体がどんな問いに関心を向けてきたかをまとめたものです。専門家がいま何に注目しているのかを知ることは、情報があふれる中で落ち着いて判断する助けになると考え、お届けします。
実験デザイン
この研究は、発表された論文そのものを対象に分析する「計量書誌学」と呼ばれる手法をとっています。子どもを直接調べた研究ではない点に注意が必要です。
- 分析した文献: Web of Science(世界の主要な学術論文を集めたデータベース)から集めた692本
- 期間: 2000年から2026年まで
- 分析の方法: 論文数の推移、よく使われる言葉のまとまり、共著関係の分析
実行機能 実行機能 目標志向的な行動を制御する認知プロセスの総称。抑制制御、ワーキングメモリ、認知的柔軟性を含む。 とは、たとえば「ブロックを片づけてから次の遊びに移る」「言われたことを覚えておいて順番に取りかかる」「思わず手が出そうになるのをこらえる」といった、目的に向かって自分を調整する力のことです。
分析の結果、研究の数は年12.42%のペースで増え続けており、特に2015年以降に伸びが大きいことが分かりました。研究の中心テーマは、ワーキングメモリ(頭の中にメモしておく力)、注意、自己調整でした。
一方、新しく注目されているテーマとして、気持ちの調整、体を動かす活動、仮想現実(VR)の活用などが挙がっています。初期の「どう測るか」という研究から、「どう育てるか」「なぜ効果が出るのか」を問う研究へと関心が移ってきていると、著者らはまとめています。
🔍 この研究を読むときの注意点
- この論文は「どんな研究が多いか」を示したものであり、「どの取り組みが効果的か」を示したものではありません。
- 研究が増えているテーマが、そのまま家庭で役立つ方法であるとは限りません。
- 共著関係はアメリカ、イギリス、中国を中心としており、ほかの地域の研究は相対的に少ないことも報告されています。日本の家庭や園の状況にそのまま当てはまるかは、個別の研究で確かめる必要があります。
🔍 ワーキングメモリとADHD研究の影響
実行機能を育てる研究の出発点には、ワーキングメモリの訓練や、ADHD(注意欠如・多動症)のある子どもへの支援の研究が大きく関わってきたと報告されています。
近年は、特定の診断がある子に限らず、気持ちの調整や運動といった、多くの子どもの日常に関わるテーマにも研究が広がっています。
古典知見との接続
心理学者ヴィゴツキーは、子どもは最初、大人の声かけや手助けを借りて行動を調整し、やがてそれを自分の内側の力として身につけると考えました。ひとりではまだ難しいけれど、少し手を貸せばできる範囲を 発達の最近接領域 発達の最近接領域 ヴィゴツキーが提唱した概念。子どもが一人ではできないが、大人の援助があればできる範囲のこと。 と呼びます。
実行機能を育てる研究が、訓練課題から暮らしの中の活動へと関心を広げていることは、この考え方と重なります。日々の関わりの中で少しずつ手を放していくことが、自分で自分を調整する力の土台になるという見方です。
🔍 家庭で見られる実行機能の芽
- 遊びの途中で「あと1回で終わりにする」と自分で言える
- 靴をはく、手を洗う、といった手順を順番どおりに進められる
- 悔しくて泣いたあと、少しして気持ちを立て直せる
こうした姿は、年齢や日によって出たり出なかったりするものです。できない日があっても、それは自然なことです。
読後感
最近、お子さんが自分の気持ちを立て直せた場面はありましたか?そのとき、周りのどんな関わりがあったでしょうか。