おなかの中から2〜3歳まで、赤ちゃんの脳を見つめる研究の最前線
📄 Highlights from the 2024 annual meeting of the fetal, infant, and Toddler Neuroimaging Group (FIT'NG).
✍️ Roche-Labarbe, N., Bick, J., Camacho, M. C., Champaud, J., Chung, H., Fabrizi, L., Korom, M., Margolis, E. T., Moser, J., Nelson, P. M., Schwarzlose, R. F., Spann, M., Zöllei, L.
📅 論文公開: 2026年1月
3つのポイント
- 1
おなかの中の赤ちゃんから2〜3歳ごろまでの脳の育ちを、画像で調べる研究者たちの学会の報告です。
- 2
早産や周りの環境などが脳の育ちとどう関わるかを知り、早めの支えにつなげることが大きなテーマになっています。
- 3
AI を使った解析の進歩で、胎児一人ひとりの脳を詳しく調べられるようになりつつあります。
論文プロフィール
- 著者 / 発表年 / 掲載誌: Roche-Labarbe, N. ほか / 2026年 / Developmental Cognitive Neuroscience
- 調査対象: 2024年9月に米国ボルチモアで開かれた、胎児・乳児・幼児の脳画像研究の学会(FIT’NG)で発表された研究
- 調査内容: 学会での発表をもとにまとめられた特集号の紹介と、この分野の最近の進歩の概観
エディターズ・ノート
赤ちゃんの脳の中で何が起きているのかは、長いあいだ外から見えにくいものでした。この報告は、胎児期から幼児期の脳を見つめる研究が、いまどこまで来ているのかを知る手がかりとしてお届けします。
実験デザイン
この論文は、1つの実験の結果ではありません。学会で発表された多くの研究をまとめた特集号の「まえがき」にあたる報告です。そのため、参加者の人数や効果の大きさといった数値は示されていません。
FIT’NG は、物理学・脳科学・心理学・コンピューター科学・医学など、さまざまな分野の研究者が集まる学会です。報告から読み取れる主なテーマは、次の3つです。
- 発達の早いサインを見つける: 発達がゆっくりだったり、ちがう道筋をたどったりする兆しを早く知り、予防や支えにつなげること
- 早産や環境との関わり: 早く生まれた赤ちゃんや、生まれる前後に負担がかかった赤ちゃんの脳がどう育つかを調べること
- 測る技術の進歩: 脳の中のつながりを細かく写す技術や、大勢の子どもを長く追いかける 縦断研究 縦断研究 同一の参加者を長期間にわたって追跡調査する研究デザイン。発達的変化の因果関係を検討できる。 のための統計の工夫
なかでも注目されたのは、おなかの中の赤ちゃんを対象とした研究です。AI(深層学習)を使った解析の進歩によって、胎児一人ひとりの脳を個別に調べられるようになりつつあると報告されています。
🔍 この論文の読み方と注意点
- 学会の特集号を紹介する報告のため、個々の研究の詳しい結果や数値は含まれていません。
- 「発達の早いサイン」の研究は、診断のためではなく、支えを早く届けるための基礎づくりの段階です。
- 脳の画像の違いが、その子の将来を決めるものではありません。脳は環境や関わりの中で変わり続けます。
🔍 赤ちゃんの脳はどうやって調べるの?
- MRI: 大きな磁石の装置で脳の形やつながりを写します。赤ちゃんが眠っているあいだに撮ることが多いです。
- 近赤外分光法: 頭に帽子のような装置をかぶせ、弱い光で脳の血流の変化を読み取ります。起きていても測れます。
- 脳波: 頭につけた電極で、脳の電気の活動を記録します。
古典知見との接続
乳幼児期の脳の研究が「環境」を大切なテーマにしていることは、ボウルビィの 愛着(アタッチメント) アタッチメント(愛着) 乳幼児と養育者の間に形成される情緒的な絆。ボウルビィが提唱し、安定型・不安定型等に分類される。 の考え方とも重なります。ボウルビィは、人生の最初の数年に築かれる周りの大人との関係が、その後の心の育ちの土台になると考えました。
当時は行動を観察することで示された考え方でしたが、今では脳の画像という別の角度からも、早い時期の環境と育ちの関わりが調べられています。赤ちゃんを取り巻く日々の関わりが、目に見えない脳の育ちとも結びついているという見方が、少しずつ裏づけを得つつあります。
読後感
目には見えなくても、赤ちゃんの中では毎日たくさんの育ちが起きています。今日、お子さんと目が合ったのは、どんな瞬間でしたか?