子育て論文研究室
発達心理学

子どものスクリーン時間を左右するのは、親自身のメディア習慣だった

📄 The problematic media use in children and their parents: Predictors of children's screen time and problematic media use

✍️ Özalp Gerçeker, G., Göçer, İ., Dorum, B., Baran, Ö.

📅 論文公開: 2026年

スクリーンタイム メディア利用 親の習慣 幼児・学童期

3つのポイント

  1. 1

    4〜11歳の子どもと親227組を調べたところ、子どもの1日のスクリーン時間は平均2.8時間、親も平均2.5時間と、どちらも長めでした。

  2. 2

    子どもの『問題のあるメディア利用』を予測したのは、親自身のインターネット利用習慣・スマホやタブレットの所有・世帯収入でした。

  3. 3

    問題のある利用の水準自体は低めで、長時間=即トラブルではなく、家庭の環境が鍵を握ることを示しています。

論文プロフィール

  • 著者: Özalp Gerçeker, G. ほか(2026年)
  • 掲載誌: Journal of Pediatric Nursing
  • 調査対象: 大学附属の小児病院に通う4〜11歳の子どもを持つ親 227名
  • 調査内容: 子どものメディア利用と親のインターネット利用を質問紙で測定し、子どもの「1日のスクリーン時間」と「問題のあるメディア利用」を何が予測するかを分析しました

エディターズ・ノート

スクリーン時間の話題はつい「子どもをどう制限するか」に集中しがちです。しかしこの研究は、子どもの画面との付き合い方が、家庭全体の習慣や環境と切り離せないことを静かに示しています。一人の子を見るのではなく、家庭という文脈ごと捉える視点を、いま改めてお届けしたいと考えました。

実験デザイン

トルコの大学附属小児病院で、4〜11歳の子どもを持つ親227名を対象に行われた 横断的 な相関研究です(※この研究は一時点で測る横断デザインで、時間を追った縦断研究ではありません)。

使われた尺度は2つです。

  • PMUM-C: 子どもの「問題のあるメディア利用」を親が評価する尺度
  • PIUQ-SF-6: 親自身の「問題のあるインターネット利用」を測る短縮版尺度

報告された平均値は次の通りです。

子どもと親の1日あたり平均スクリーン時間。子ども2.8±1.6時間、親2.5±1.8時間(出典: Özalp Gerçeker et al., 2026) 0 1 1 2 2 3 1日あたりの時間(時間) 2.8 子のスクリーン時間 2.5 親のスクリーン時間
子どもと親の1日あたり平均スクリーン時間。子ども2.8±1.6時間、親2.5±1.8時間(出典: Özalp Gerçeker et al., 2026)
項目 1日あたりの時間(時間)
子のスクリーン時間 2.8
親のスクリーン時間 2.5
子どもと親の1日あたり平均スクリーン時間。子ども2.8±1.6時間、親2.5±1.8時間(出典: Özalp Gerçeker et al., 2026)

子どもの「問題のあるメディア利用」スコア(PMUM-C)の平均は57.4±25.0、親のインターネット利用スコア(PIUQ-SF-6)の平均は11.9±4.3でした。研究者らは、スクリーン時間は長めである一方、問題のある利用の水準そのものは「低め」と報告しています。

重回帰分析で、子どもの「問題のあるメディア利用」を予測したのは次の3つでした。

  • 親自身の問題のあるインターネット利用
  • 子どもがスマホ・タブレットを自分で所有していること
  • 世帯収入

一方、子どもの「スクリーン時間の長さ」を予測したのは、子どもの性別・就学状況、親の性別・年齢・学歴といった、より背景的な要因でした。

🔍 『時間の長さ』と『問題のある利用』は別物

この研究で興味深いのは、「スクリーン時間が何時間か」と「その利用に問題があるか」を分けて測っている点です。

  • スクリーン時間: 単純に画面を見ている時間の長さです。
  • 問題のあるメディア利用: 使うのをやめられない、生活に支障が出るといった「困りごと」の度合いです。

両者を予測する要因が違ったことは、「長く見ている=即トラブル」とは限らないことを示しています。時間の数字だけで一喜一憂しなくてよい、という安心材料でもあります。

🔍 この研究の限界

解釈には注意が必要です。

  • 一時点の調査: 横断デザインのため、「親の習慣が原因で子の利用が結果」と因果を断定はできません。互いに影響し合っている可能性もあります。
  • 親による回答: 子どもの利用は親が評価しているため、実際の様子と差がある可能性があります。
  • 特定の集団: 小児病院に通う家庭が対象で、すべての家庭にそのまま当てはまるとは限りません。

古典知見との接続

子どもは、身近な大人の振る舞いを見て学びます。これは発達心理学が古くから指摘してきたことで、大人がモデル(手本)となって行動が伝わっていく現象です。

この研究で「親のインターネット利用」が子どもの問題のあるメディア利用を予測したことは、まさにこの観察学習の枠組みと響き合います。子どもは「画面を使うな」という言葉よりも、家族が画面とどう付き合っているかという姿そのものから、メディアとの距離感を学び取っているのかもしれません。

また、自己コントロールの土台となる 実行機能 (やりたい衝動をいったん止めて、状況に合わせて切り替える力)は、まだ育っている途中の年齢です。だからこそ、子ども一人の意志に任せるのではなく、家庭の環境設計が大きな意味を持ちます。

読後感

子どもにスクリーンとの付き合い方を教えるとき、いちばんの教科書は、実は周りの大人の後ろ姿なのかもしれません。

今日、ご家族が画面から顔を上げて、お子さんと目を合わせた瞬間は、どれくらいありましたか。