すくすくベリー研究所
発達心理学

「スマホ時間」より「何を見ているか」がカギ?思春期のスクリーンタイムと心の健康

📄 Specific types of screen exposure and adolescent emotional and behavioral problems: Longitudinal associations and moderation by individual, family, and school characteristics.

✍️ Liu, Q., Peng, S., Yang, Y., Guo, Y., Jiang, G., Guo, L.

📅 論文公開: 2026年1月

スクリーンタイム 思春期 メンタルヘルス

3つのポイント

  1. 1

    スマートフォンの利用時間が同じでも、使っているアプリの種類によって心への影響が異なることが分かりました。

  2. 2

    SNSや短い動画、ゲームに触れる時間が長いほど、イライラしたり落ち着きがなくなったりする傾向がみられました。

  3. 3

    ただし、家庭でのコミュニケーションが良好な場合、その悪影響が和らぐ可能性が示されています。

論文プロフィール

  • 著者:Liu, Q., ら
  • 発表年:2026年
  • 掲載誌:Public Health
  • 調査対象:平均年齢15.89歳の青少年 10,770名
  • 調査内容:画面を見る時間(スクリーン曝露)の種類と、感情や行動のトラブルとの関係性を数年にわたって追跡した調査。

エディターズ・ノート

「スマホの見過ぎはよくない」とよく言われますが、大切なのは時間だけなのでしょうか。最新の大規模な調査から、「何を見ているか」そして「家族とどう過ごしているか」が、子どもの心に大きく関わっていることが見えてきました。

実験デザイン

1万名以上の青少年を対象に、同じ人たちを長い期間にわたって追跡する 縦断的研究 が行われました。

調査の結果、SNS、短い動画(ショート動画)、ゲームに触れる時間が1時間増えるごとに、感情的な不安定さにつながるリスクが少しずつ上がる(オッズ比1.04〜1.06倍)ことが示されました。一方で、家庭でのあたたかいコミュニケーションや支え合い(家族機能)がしっかりしていると、そのリスクの上昇がゆるやかになる傾向も確認されています。

家庭のサポートによる動画視聴の影響の違い(概念図) 0 10 20 30 40 50 感情的な不安定さのリスク ショート動画の視聴時間(イメージ) 家庭のサポートが少ないグループ: 15 (ショート動画の視聴時間(イメージ)=1) 家庭のサポートが少ないグループ: 30 (ショート動画の視聴時間(イメージ)=2) 家庭のサポートが少ないグループ: 45 (ショート動画の視聴時間(イメージ)=3) 家庭のサポートが多いグループ: 10 (ショート動画の視聴時間(イメージ)=1) 家庭のサポートが多いグループ: 18 (ショート動画の視聴時間(イメージ)=2) 家庭のサポートが多いグループ: 25 (ショート動画の視聴時間(イメージ)=3) 家庭のサポートが少ないグループ 家庭のサポートが多いグループ
家庭のサポートによる動画視聴の影響の違い(概念図)
系列 ショート動画の視聴時間(イメージ) 感情的な不安定さのリスク
家庭のサポートが少ないグループ 1 15
家庭のサポートが少ないグループ 2 30
家庭のサポートが少ないグループ 3 45
家庭のサポートが多いグループ 1 10
家庭のサポートが多いグループ 2 18
家庭のサポートが多いグループ 3 25
家庭のサポートによる動画視聴の影響の違い(概念図)

※この調査は「観察研究」と呼ばれる手法を用いており、「特定の動画を見たから必ず精神的に不安定になる」という因果関係までを断定するものではありません。

古典知見との接続

青年期は、自分が何者かを探求し、自立へ向かう大切な時期です。心理学者のエリクソンは、この時期の課題を「アイデンティティ(自我同一性)の確立」と呼びました。

スマートフォンの中の多様な価値観に触れることは、世界を広げる一方で、心が揺れ動きやすくなる原因にもなります。そんな時、ありのままを受け入れてくれる家族の存在が、外の世界からのストレスをやわらげるクッションになるのだと考えられます。

すくすくベリーとしての解釈

私たちは、テクノロジーを遠ざけるのではなく、いかに上手に付き合っていくかを探求しています。

AI解析とプロダクトへの応用 この研究から学べるのは、「スクリーンタイムの総量」だけでアラートを出す設計には限界があるということです。 すくすくベリーでは、お子さまの学習や遊びのログを解析する際、「ただ長い時間アプリを使っているか」だけでなく、「創造的な活動をしているか」「受動的に動画を眺めているか」といった**体験の質(種類)**に注目したいと考えています。この知見は、アプリの利用履歴をAIが細やかに捉え、発達の段階に応じた「適切なデジタルとの付き合い方」を提案する仕組みの土台となります。

家庭で今日からできること とはいえ、お子さまのスマホを細かく監視するのは現実的ではありませんし、親子関係を悪化させるおそれもあります。 まずは、「どんな動画が好きなの?」「そのゲーム、どうやったらクリアできるの?」と、お子さまが見ている世界に少しだけ興味を持ってみませんか。研究が示す通り、家庭での何気ない会話や繋がりが、デジタルの波からお子さまの心を守る大切な盾になります。

0歳から18歳を見据えて この調査は15歳前後を対象としていますが、「デジタルとの付き合い方」と「家庭での対話」のバランスは、初めてタブレットに触れる幼児期から少しずつ育まれていくものです。思春期になって急に取り締まるのではなく、小さいうちから「一緒に楽しむ」経験を積み重ねることが、将来の心の安定に繋がると私たちは考えています。

読後感

あなたは最近、お子さまが画面の向こうで何に夢中になっているか、一緒に覗き込んでみたことはありますか?