2〜3歳のことばの発達チェックは、何を見ているのか
📄 Screening Beyond First Words: A Scoping Review of Speech and Language Screening Tools and Approaches for 2- and 3-Year-Olds.
✍️ Price, C, Munro, N, Bernie, C, Hadley, P, Baker, E
📅 論文公開: 2026年1月
3つのポイント
- 1
2〜3歳のことばや発音の発達を早めに確かめる方法について、101本の研究を集めて整理したレビューです。
- 2
見つかった114種類の方法の多くは、話せる単語の数や二語文など「話すことば」を中心に見ており、発音は主に「聞き取りやすさ」で確かめられていました。
- 3
方法の精度や、誰がチェックを行ったかの報告が少なく、どの方法がよいかを言い切れる段階ではありません。
論文プロフィール
- 著者: Price, C / Munro, N / Bernie, C / Hadley, P / Baker, E
- 発表年 / 掲載誌: 2026年 / American Journal of Speech-Language Pathology(DOI: 10.1044/2026_AJSLP-25-00607)
- 調査対象: 2歳0か月〜3歳11か月の子どものことばと発音を確かめる方法を扱った研究101本
- 調査内容: チェックの方法がどんな力を見ているか、方法の精度はどうか、誰がチェックを行っているかを整理したスコーピングレビュー(ある分野の研究を幅広く集めて全体像を整理する調べ方)
エディターズ・ノート
1歳半や2歳の健診で「ことばはいくつ出ていますか」と聞かれた経験のある方は多いと思います。この論文は、その先の2〜3歳の時期に、ことばの発達を確かめる方法が実際に何を見ているのかを、世界の研究から整理しています。
実験デザイン
研究チームは、決まった手順に沿って文献を幅広く検索し、条件を満たした研究を集めました。一つひとつの研究から情報を抜き出し、質を評価したうえで、件数と割合を数え、内容を文章でまとめています。
主な結果は次のとおりです。
- 条件を満たした研究は101本で、チェックは3歳より2歳で行われることが多くありました
- 見つかった方法は重複を除いて114種類ありました
- 多くの方法は、子どもが話すことば(話せる単語の数や、「ワンワン きた」のような二語のつながり)を見ていました
- 発音を見る方法では、主に「周りの人がどれくらい聞き取れるか」が確かめられていました
- 子どもを直接観察するより、保護者への質問票などの間接的な方法がよく使われていました
つまり、2〜3歳のことばのチェックは、「話せる単語の数」に重心が寄っていることが分かりました。一方で、方法の精度(本当に支援が必要な子を見つけられるか)や、誰がチェックを行ったかを報告している研究は少なく、どの方法が優れているかまでは結論づけられていません。
🔍 スコーピングレビューとメタ分析の違い
似た言葉に メタ分析 メタ分析 複数の研究結果を統計的に統合・分析する手法。個々の研究よりも信頼性の高い結論を導出できる。 があります。メタ分析は、複数の研究の数値を統計的にまとめて「効果がどれくらいあるか」を出す方法です。
スコーピングレビューは、効果の大きさを計算するのではなく、「どんな研究や方法がどれくらいあるか」という地図を作る方法です。そのため、この論文から「この方法を使えば正確に分かる」という答えは出てきません。
🔍 研究の限界と読み方の注意
- 集めた研究の多くで、方法の精度や実施者の情報が十分に報告されていませんでした。
- 質問票などの間接的な方法は、答える大人の見方や記憶に左右されることがあります。
- 2歳と3歳では、見るべき力が変わります。論文は、チェックを行う年齢と、方法が何を見ているかを合わせて考える必要があると述べています。
2〜3歳のことばの伸び方は子どもによって大きく異なります。この論文は、個々のお子さんの発達を評価するためのものではありません。
古典知見との接続
ヴィゴツキーは、ことばを「人と人とのやりとりの中で育つもの」と考えました。子どもが一人ではまだ難しいことも、大人が少し手伝うとできる範囲があり、これを 発達の最近接領域 発達の最近接領域 ヴィゴツキーが提唱した概念。子どもが一人ではできないが、大人の援助があればできる範囲のこと。 と呼びます。
この見方に立つと、話せる単語の数は、ことばの力のほんの一部です。身ぶりと一緒に伝えようとする、聞き返されて言い直す、大人の言葉を受けて会話を続ける。こうしたやりとりの中で見える力も、ことばの育ちの大切な一面だと考えられます。
ピアジェは、ことばの出現を、目の前にないものを頭の中で思い浮かべる力(象徴機能)の広がりと結びつけました。2〜3歳は、ごっこ遊びが豊かになり、見立てとことばが一緒に伸びる時期でもあります。
🔍 家庭で目にする「ことば」のいろいろな姿
単語の数のほかにも、家庭ではことばの育ちをいろいろな形で目にします。
- 「あっち」と指さしながら、見てほしいものを伝えようとする
- 聞き取ってもらえなかったとき、別の言い方や身ぶりで言い直す
- 大人が「お水?」と聞くと「おみず、のむ」と言葉を足して返す
- ぬいぐるみに話しかけながら、ごっこ遊びをする
大人がそっと言葉を補って会話をつなぐ関わりは、 足場かけ 足場かけ 学習者の理解レベルに応じて適切な支援を提供し、徐々に支援を減らしていく教育的介入手法。 とも呼ばれます。
読後感
今日、お子さんはどんなふうに気持ちを伝えようとしていましたか?