すくすくベリー研究所
神経科学

子どものインターネット依存と脳の発達:年齢・性別ごとのリスクと向き合い方

📄 The neurobiology of internet addiction: a scoping review of developmental and gender-specific mechanisms.

✍️ Jin, J., Wei, H., Chai, Y., Wu, L., Chen, M., Ding, K.

📅 論文公開: 2026年1月

インターネット依存 脳科学 思春期 自己コントロール

3つのポイント

  1. 1

    インターネット依存は、脳の『自己コントロール』や『報酬』に関わる領域の働きに影響を与えます。

  2. 2

    思春期の子どもは感情や欲求をコントロールする脳の機能が未熟なため、大人とは異なる形で依存のリスクが高まります。

  3. 3

    依存の現れ方には性差があり、男の子はゲームなどの衝動的な行動、女の子はSNSなどの感情的なやり取りに影響が出やすい傾向があります。

論文プロフィール

  • 著者:Jin, J. ら
  • 発表年:2026年
  • 掲載誌:Frontiers in Psychology
  • 調査対象:2015年から2025年に発表された、年齢や性別を考慮したインターネット依存と脳神経に関する査読付き論文
  • 調査内容:インターネット依存が脳の構造や機能にどのような影響を与えるか、またその影響が年齢(思春期と成人)や性別によってどう異なるかを検証

エディターズ・ノート

「うちの子、スマホばかり見ていて大丈夫かしら?」——デジタル機器との付き合い方は、現代の子育てにおいて最も多い悩みのひとつです。今回は、インターネット依存のリスクが年齢や性別によってどう異なるのかを脳科学の視点から紐解き、お子さんに合わせたサポートのあり方を考えるためにこの論文を選びました。

実験デザイン

本研究は、過去10年間の研究を網羅的に分析した手法で行われました。分析の結果、インターネット依存には以下のような特徴があることが示されています。

  • 思春期特有のアンバランスさ: 思春期は、楽しいことを求める「報酬系」の脳領域が先に発達し、目標に向けて自分を律したり、我慢したりする力( 実行機能 )の発達が追いついていない時期です。この「脳の発達のミスマッチ」が、依存への弱さにつながると考えられています。
  • 性別による傾向の違い: 男の子はゲームなどの衝動的な行動に、女の子はSNSでのコミュニケーションなど社会的・感情的な処理に関わる脳の領域に、より強い影響が見られました。
思春期における脳の発達のミスマッチ(概念図) 0 22 44 66 88 110 発達の程度 年齢(歳) 楽しいことを求める力(報酬系の成熟度): 50 (年齢(歳)=10) 楽しいことを求める力(報酬系の成熟度): 85 (年齢(歳)=13) 楽しいことを求める力(報酬系の成熟度): 95 (年齢(歳)=16) 楽しいことを求める力(報酬系の成熟度): 100 (年齢(歳)=20) ブレーキをかける力(実行機能の成熟度): 30 (年齢(歳)=10) ブレーキをかける力(実行機能の成熟度): 45 (年齢(歳)=13) ブレーキをかける力(実行機能の成熟度): 65 (年齢(歳)=16) ブレーキをかける力(実行機能の成熟度): 90 (年齢(歳)=20) 楽しいことを求める力(報酬系の成熟度) ブレーキをかける力(実行機能の成熟度)
思春期における脳の発達のミスマッチ(概念図)
系列 年齢(歳) 発達の程度
楽しいことを求める力(報酬系の成熟度) 10 50
楽しいことを求める力(報酬系の成熟度) 13 85
楽しいことを求める力(報酬系の成熟度) 16 95
楽しいことを求める力(報酬系の成熟度) 20 100
ブレーキをかける力(実行機能の成熟度) 10 30
ブレーキをかける力(実行機能の成熟度) 13 45
ブレーキをかける力(実行機能の成熟度) 16 65
ブレーキをかける力(実行機能の成熟度) 20 90
思春期における脳の発達のミスマッチ(概念図)

古典知見との接続

今回の論文では、インターネット依存のリスクが「感情や欲求をコントロールする力」の未熟さと深く関わっていることが示されました。 思春期は体は大きく成長しますが、急な予定変更にもパニックにならず、スッと頭を切り替える力( 実行機能 )を司る前頭前野は、20代になるまでゆっくりと時間をかけて成熟していきます。そのため、大人のように「時間だからやめよう」と理屈で行動を切り替えることが、脳の仕組みとしてそもそも難しい時期でもあるのです。

すくすくベリーとしての解釈

私たちは、この研究から「画一的なルールや制限だけでは、デジタル時代の子どもたちを守りきれないかもしれない」というメッセージを受け取っています。

プロダクトの設計において すくすくベリーでは、お子さんのアプリ利用時間や遊びのログをAIが解析し、保護者の方にフィードバックをお届けしています。この研究の知見は、「長時間の利用」を一律に警告するのではなく、お子さんの年齢や発達のフェーズ、そして行動の傾向(ゲームに熱中しやすいのか、コミュニケーションに夢中になりやすいのか)に合わせた、きめ細やかな声かけを設計する背景となっています。将来的には、0歳から18歳までの成長を見据え、お子さん自身が自分の「熱中しやすさ」に気づき、セルフコントロールを身につけるためのサポート機能へとつなげていきたいと考えています。

ご家庭でのヒント 「なぜこんなに止められないの!」と叱りたくなる気持ち、とてもよく分かります。ですが、そんな時は「いま、脳のブレーキが育っている途中なんだな」と少しだけ視点を変えてみてください。無理に取り上げるのではなく、「あと1回戦終わったらごはんにしようか」と、お子さんが自分で区切りをつけやすい声かけから試してみるのはいかがでしょうか。

読後感

大人でも、ついつい夜更かししてスマホを見てしまうことがあるものです。 あなたのお子さんが、デジタル機器に最も夢中になるのはどんな時ですか? その「夢中」の裏には、どんな欲求や感情が隠れているのでしょうか。