「仲間はずれが怖い」気持ちがスマホ依存の引き金に? FoMOとスマホ利用の悪循環
📄 Longitudinal associations between fear of missing out, problematic social media use, and problematic smartphone use.
✍️ Hou, X., Xu, L., Zhou, N., Zhu, X., Mõttus, R., Johnson, W.
📅 論文公開: 2026年1月
3つのポイント
- 1
「自分だけが楽しいことを見逃しているかも」という不安(FoMO)が強い人ほど、スマホやSNSに依存しやすい傾向があります。
- 2
この不安は一時的な感情の波としても現れ、不安が高まった直後にはスマホ利用が増えるという悪循環が見られます。
- 3
逆に、スマホやSNSを使いすぎることが「自分だけが知らない情報があるのでは」という新たな不安を生み出すこともあります。
論文プロフィール
- 著者名: Hou, X., Xu, L., Zhou, N., Zhu, X., Mõttus, R., & Johnson, W.
- 発表年: 2026年
- 掲載誌: Journal of Addictive Behaviors
- 調査対象: 1,596名の若者(平均年齢19.33歳)を対象とした5時点にわたる追跡調査
- 調査内容: 「取り残されることへの不安(FoMO: Fear of Missing Out)」と、問題のあるSNS・スマホ利用との長期的な関係性を調査
エディターズ・ノート
お子さんのスマホとの付き合い方は、多くのご家庭にとって悩みの種ではないでしょうか。
「またスマホばかり見て!」と利用時間だけを注意してしまいがちですが、その行動の裏には、子どもなりの切実な気持ちが隠れているのかもしれません。
今回は、スマホを手放せない背景にある「取り残されたくない」という不安感(FoMO)に着目した研究をご紹介します。お子さんの心の内を理解する、新たな視点を提供できれば幸いです。
実験デザイン
この研究では、1,596人の参加者に対して、約1年間にわたり5回、同じ内容のアンケート調査を行いました。
このような長期間にわたる 縦断的調査 縦断研究 同一の参加者を長期間にわたって追跡調査する研究デザイン。発達的変化の因果関係を検討できる。 を通じて、一時的な気分の変化ではなく、人々の行動や心理が時間と共にどう変化し、互いに影響し合うかを分析しています。
具体的には、以下の3つの項目について、その関連性を調べています。
- FoMO: 他の人が経験している楽しいことや有益な情報から、自分だけが取り残されていると感じる不安。
- 問題のあるSNS利用: SNSの利用を自分でコントロールできず、やめたいのにやめられない状態。
- 問題のあるスマホ利用: スマホの利用が日常生活に支障をきたしている状態。
分析の結果、これら3つの要素が互いに影響を及ぼし合い、悪循環を生み出している可能性が示唆されました。
| 項目 | 影響の強さ |
|---|---|
| ① 不安の高まり | 60 |
| ② スマホ利用の増加 | 75 |
| ③ さらなる不安 | 90 |
この図が示すように、「取り残される不安」が高まると、その不安を解消しようとしてSNSやスマホを見る時間が増えます。しかし、スマホを見すぎると、今度は友人たちの楽しそうな投稿などを目にし、「自分だけが知らないことがあるのでは」と、かえって不安が増幅されてしまう…というサイクルです。
古典知見との接続
この研究結果は、発達心理学者エリクソンの理論と深く関わっています。
エリクソンは、青年期(おおよそ12歳〜22歳頃)の最も重要な発達課題は「 アイデンティティ 個性化 ユングの分析心理学における中心概念。自己の全体性を実現していく心理的発達プロセス。 の確立」、つまり「自分は何者か」という問いに答えを見つけることだと考えました。
この時期の子どもたちは、親からの自立を目指すと同時に、友人関係など「仲間集団への所属」を通じて自分の存在価値を確認しようとします。
SNSは、この「つながり」や「所属」を簡単に可視化してくれるツールです。しかし、本研究が示すように、他者とのつながりを過度に意識しすぎると、「取り残される不安」が強まり、健全な自己像を築く上での妨げになってしまう危険性もはらんでいるのです。
すくすくベリーとしての解釈
私たちは、この研究から得られる知見を、これからのプロダクト設計における大切な指針として捉えています。
プロダクト設計への示唆
すくすくベリーは、将来的に思春期のお子さんの活動ログもサポートすることを目指しています。その際、AIが「深夜帯のSNSアプリ利用時間の急増」や「友人関係に関するネガティブなキーワード検索」といった行動パターンを検知することが考えられます。
今回の研究結果は、こうした行動ログを単なる「スマホの使いすぎ」や「非行のサイン」として短絡的に判断するのではなく、その背景にある**「FoMOの高まり」や「友人関係の悩み」のシグナル**として捉えるAIモデルを設計する上で、重要な示唆を与えてくれます。
私たちの目標は、行動データからお子さんの心の揺らぎを繊細に読み取り、「最近、少し不安を感じているのかもしれませんね。よかったら、気持ちを聞かせてくれませんか?」といった、行動の裏にある感情に寄り添うフィードバックを保護者の方へ提供することです。
ご家庭で今日からできること
お子さんがスマホばかり見ている時、つい「何を見ているの?」と利用内容を尋ねてしまうかもしれません。
そんな時、一度立ち止まって、「最近、学校や友達とのことで、何か気になることある?」と、行動の背景にある気持ちについて話を聞く時間を作ってみてはいかがでしょうか。
「親は自分のことを気にかけてくれている」という安心感が、スマホへの過度な依存から抜け出すための、何よりの土台になるはずです。
読後感
スマホとの付き合い方は、子どもだけでなく大人にとっても難しいテーマです。テクノロジーと上手に付き合いながら、心の健康を育んでいくために、私たちは何ができるでしょうか。
あなたのお子さんは、どんな時に「仲間はずれにされたくない」という気持ちを口にしますか? あるいは、態度で示しているように感じますか?