子育て論文研究室
テーマ解説 (最終更新 2026年5月19日) 4本の研究をもとに解説

中学生のスマホ依存、どう向き合う? 研究から見える「時間より背景」の視点

「またスマホばかり…」と時間ばかりが気になる中学生のスマホ問題を、縦断研究の知見から整理します。叱る前に背景の不安や脳の発達を理解することで、長く効く関わりが見えてきます。

3つのポイント

  1. 1

    「使った時間の長さ」よりも「何に・どんな気持ちで触れているか」のほうが、心への影響と結びつきやすいことが大規模な縦断研究から見えてきています。

  2. 2

    思春期は楽しさを求める脳が先に育ち、ブレーキの力は後から育つ時期です。中学生が自分で止めにくいのは、意志の弱さではなく発達の途中だからと捉え直せます。

  3. 3

    家庭のあたたかい対話がデジタルの影響を和らげうると報告されています。取り上げるより「一緒に考える」関わりが、長い目で見て土台になります。

「気づけば一日中スマホを触っている」「夜中までゲームや動画が止まらない」——中学生になったお子さまのスマホとの距離感に、ため息をついてしまう日はありませんか。取り上げれば不機嫌になり、見守れば心配が募り、と出口が見えにくいテーマです。

このページでは、「何分までならOK」といった具体的な制限ルールの正解や、依存症の診断基準・治療法には踏み込みません。代わりに、思春期の子どもがなぜスマホを手放しにくいのか、その背景にある心と脳の発達を、発達研究の知見から整理します。気がかりが強い場合は、最後の「専門家に相談する目安」もあわせてご覧ください。

何がわかっているか

「スマホ依存」と聞くと、まず「利用時間をどう減らすか」に目が向きがちです。けれども近年の研究は、時間の長さだけでは説明しきれない部分に光を当て始めています。

研究記事 発達心理学15〜16歳

「スマホ時間」より「何を見ているか」がカギ?思春期のスクリーンタイムと心の健康

スマートフォンの利用時間が同じでも、使っているアプリの種類によって心への影響が異なることが分かりました。

平均15歳前後の青少年1万人超を数年間追いかけたこの縦断研究では、同じ利用時間でも、SNS・短い動画・ゲームに触れる時間が長いほど、感情や行動の不安定さと結びつきやすい傾向(1時間あたりおおむね1.04〜1.06倍)が報告されています。一方で、家庭のあたたかいコミュニケーションが保たれているグループでは、その上昇がゆるやかになる傾向も見られました。ただしこれは観察研究であり、「特定の使い方をしたから必ずこうなる」という因果関係を断定するものではない点には注意が必要です。それでも、「時間の総量」だけでなく「何を・どんな環境で見ているか」に目を向ける手がかりになります。

では、なぜ中学生はそもそも「やめたいのにやめられない」のでしょうか。脳の発達の側から眺めた研究があります。

研究記事 神経科学

子どものインターネット依存と脳の発達:年齢・性別ごとのリスクと向き合い方

インターネット依存は、脳の『自己コントロール』や『報酬』に関わる領域の働きに影響を与えます。

過去10年の研究を横断的にまとめたレビューによると、思春期は楽しさや報酬を求める脳の働きが先に発達し、それにブレーキをかける力(実行機能)の発達が追いついていない時期だと考えられています。この「発達のミスマッチ」が、大人より依存に傾きやすい背景にあるとされます。さらに、現れ方には性差の傾向もあり、おおまかには男の子はゲームなどの衝動的な行動に、女の子はSNSでのやり取りに影響が出やすいと整理されています。なおこれは個々の子どもを断定する話ではなく、傾向として知っておく視点です。中学生が自分で止めにくいのは、意志の弱さではなく脳がまだ育っている途中だから、と捉え直す材料になります。

脳の未熟さに加えて、思春期ならではの「気持ち」も関わってきます。

研究記事 発達心理学

「仲間はずれが怖い」気持ちがスマホ依存の引き金に? FoMOとスマホ利用の悪循環

「自分だけが楽しいことを見逃しているかも」という不安(FoMO)が強い人ほど、スマホやSNSに依存しやすい傾向があります。

「自分だけが楽しいことや情報から取り残されているかも」という不安(FoMO)に着目した縦断研究では、この不安が強い人ほどスマホやSNSに依存しやすく、不安が高まった直後に利用が増え、使いすぎがさらに新たな不安を生む、という悪循環の存在が示唆されています。対象は平均19歳前後とやや年上で中学生そのものではありませんが、仲間とのつながりを強く意識する思春期に通じる視点です。スマホを離さない背景に、「仲間はずれが怖い」という切実な気持ちが隠れていることがある、と気づかせてくれます。

最後に、こうしたリスクを早めに見つけて支えようとする、進行中の大規模研究も紹介します。

研究記事 発達心理学12〜16歳

子どものネット依存リスクを予測する──欧州9か国2,500人規模の縦断研究プロトコル

欧州9か国の12〜16歳・2,500人以上を対象に、インターネットの使いすぎ(問題的使用)のリスク要因を6か月間追跡する大規模研究のプロトコルです。

欧州9か国の12〜16歳・2,500人以上を追跡するこの研究は、衝動性や注意の偏り、ブレーキをかける力などの個人差から、ネットの問題的な使用のリスクを読み解こうとしています。注目したいのは、「長時間使うこと」自体ではなく「使い方が学業・睡眠・友人関係などの生活に支障をきたしているか」でリスクを捉えている点です。これは結果がまだ出ていない計画段階の論文ですが、問題なのは利用そのものではなく生活への影響という見方は、家庭で様子を見るときの軸になります。

ここまでをひとことでまとめると、中学生のスマホとの付き合いは「使った時間」だけで測れるものではなく、何に・どんな気持ちで触れ、それが生活にどう響いているかを、発達の途中という前提に立って眺めるほうが、実態に近づけそうだ、ということになります。

家庭でできること

正解の時間制限を決めることよりも、日々の関わりのなかで無理なく試せる工夫を、研究の知見と結びつけて整理します。

時間ではなく「何を見ていたか」を一緒に話す

「何時間使ったの」より「今日はどんな動画が面白かった?」と中身に関心を向けてみてください。利用の質や種類のほうが心への影響と結びつきやすいという縦断研究の知見からも、内容を共有する会話そのものが、状況を一緒に把握する入り口になります。

「やめなさい」の前に、終わりの予告を一拍はさむ

いきなり取り上げるより、「あと10分で切り上げよう」と先に伝え、自分で区切る体験を積むほうが効果的とされます。思春期はブレーキの力がまだ育っている途中なので、自分で止める練習の機会を渡す、という視点が脳の発達と噛み合います。

スマホを離さない日の「気持ち」に目を向ける

特に依存が強い日は、「友達の輪から外れたくない」という不安が背景にあることがあります。「最近、学校や友達のことで気になることある?」と、行動ではなく気持ちを聞く時間をつくると、FoMOの悪循環をやわらげる手がかりになります。

生活に支障が出ているかを基準にする

「長く使っている=悪い」と一律に決めず、睡眠・学校・友人関係に実際に支障が出ているかを目安にしてみてください。問題は利用そのものではなく生活への影響、という研究の区別が、過度に不安にならずに見守る助けになります。

あたたかい雑談の時間を、意識して残す

家庭のコミュニケーションが保たれているとデジタルの影響がゆるやかになる傾向が報告されています。説教ではない何気ない雑談こそが、外からのストレスをやわらげるクッションになります。短くても続けることが土台になります。

スマホの中身をすべて監視したり、毎回完璧にルールを守らせたりする必要はありません。研究が示しているのは、個々の対応の正解ではなく、生活が回っているか・気持ちを話せる関係があるかという方向性です。今日うまくいかなくても、関わりを重ねていく方向が合っていれば十分です。

専門家に相談する目安

スマホとの距離感に悩むのは、思春期の多くのご家庭が通る道で、明確な「何時間からが危険」という線引きがあるわけではありません。それでも、家庭の工夫だけでは辛くなってきたとき、相談していい目安はあります。迷ったら相談する、で構いません

利用時間の数字そのものより、生活への影響やご家族の感覚を手がかりにしてみてください。たとえば次のようなときは、学校の先生やスクールカウンセラー、かかりつけの小児科医、自治体の思春期相談・子育て支援の窓口に、一度声をかけてみると安心です。

  • 睡眠・学業・友人関係など、生活の基盤に支障が出てきている
  • スマホを取り上げようとすると、自分や周りを傷つけてしまう行動が出る
  • お子さま自身が「やめたいのにやめられなくて苦しい」と訴えている
  • 受験・進学・転校など、ご家庭側の余裕が一時的に削れている時期と重なっていて、関わり続けるのが辛い
  • ご自身が「怒鳴ってしまう」「スマホを巡って毎日ぶつかってしまう」と感じる場面が増えてきた
  • 親・祖父母など複数の養育者の間でルールの温度差があり、お子さまの様子も揺れているように見える

相談は「依存症と診断してもらうため」だけのものではありません。「最近この件でしんどい、話を聞いてほしい」だけでも十分な相談理由です。早めに話してみることで、家庭で続けられる工夫の輪郭や、ご家族自身の休み方が見えてくることもあります。

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