子育て論文研究室
発達心理学

遊びが身体を育む?プレイセラピーが運動機能に与える影響

📄 Outcomes of adherence to play therapy in children with cerebral palsy: a clinical trial.

✍️ Lakshmi, S., Mahadevan, R., Linus, L., Raju, A., Mohamed, MA., Aldauyj, FAM., Alnuaimi, SE.

📅 論文公開: 2026年

運動発達 プレイセラピー 身体性

3つのポイント

  1. 1

    脳性麻痺のある5歳から13歳の子どもたちを対象に、遊びを取り入れた支援(プレイセラピー)を6週間行いました。

  2. 2

    その結果、子どもたちはプログラムに高い割合で参加し続け、特に手や腕を巧みに使う力が向上することが示されました。

  3. 3

    この研究は、遊びが子どもたちの運動機能を育む上で重要である可能性を示唆していますが、より多くの参加者での検証が必要です。

論文プロフィール

  • 著者名 / 発表年 / 掲載誌: S. Lakshmi氏ら / 2026年 / Clinical Trials
  • 調査対象: 脳性麻痺のある5歳から13歳の子どもたち 12名
  • 調査内容: 遊びを取り入れた支援(プレイセラピー)が、手や腕の機能にどのような影響を与えるか、また子どもたちがプログラムを継続できるかを調査しました。

エディターズ・ノート

「遊んでばかりいないで」と、つい言ってしまうこともあるかもしれません。ですが、実はその「遊び」こそが、心と身体を育む最高の学びの場である可能性を秘めています。

今回は、特に身体機能の発達に焦点を当て、計画された「遊び」が持つ力を科学的に探った研究をご紹介します。

実験デザイン

この研究では、脳性麻痺のある12名のお子さんを対象に、6週間にわたるプレイセラピー(遊びを通じた療育)プログラムが実施されました。

具体的には、施設で週5回、ご家庭で週2回、専門家がデザインした遊びのセッションに参加してもらいました。

そして、プログラムの前後で、手や腕をどれだけ巧みに使えるかを測るテスト(QUEST)のスコアを比較しました。この研究は、同じグループの介入前後の変化を見る「単一アーム臨床試験」という手法を用いています。

結果として、プログラム後にはテストのスコアが統計的に意味のある形で向上していることが分かりました(p = 0.046)。これは、偶然とは考えにくい改善が見られたことを示しています。

介入前後での上肢機能テスト(QUEST)平均スコアの変化。データはLakshmi et al. (2026)より引用。 0 10 19 29 39 49 上肢機能テストのスコア 47.65 プログラム実施前 48.51 プログラム実施後
介入前後での上肢機能テスト(QUEST)平均スコアの変化。データはLakshmi et al. (2026)より引用。
項目 上肢機能テストのスコア
プログラム実施前 47.65
プログラム実施後 48.51
介入前後での上肢機能テスト(QUEST)平均スコアの変化。データはLakshmi et al. (2026)より引用。

ただし、この研究は参加者が12名と少なく、介入を受けなかった子どもたちとの比較も行われていないため、結果の解釈には慎重さが必要です。あくまで「遊びが運動機能の向上につながるかもしれない」という可能性を示した、第一歩の研究と捉えるのが誠実な姿勢だと考えられます。

古典知見との接続

この研究は、ロシアの心理学者ヴィゴツキーが提唱した概念と深くつながっています。

セラピストが提供する「少し頑張ればできそうな課題」を含んだ遊びは、まさに子どもが一人ではできないけれど、手助けがあれば達成できる領域、すなわち 「発達の最近接領域」 に働きかけるアプローチと言えます。

また、セラピストが遊びの環境を整えたり、ヒントを与えたりする関わり方は、子どもの発達を支えるための 「足場かけ(スキャフォールディング)」 そのものです。遊びという楽しい文脈の中で、子どもは自ら学び、能力を伸ばしていくのです。

読後感

あなたのお子さんは、どんな遊びに夢中になっている時、いきいきと体を動かしていますか?

その「好き」という気持ちの中に、どんな成長の芽が隠れているか、少しだけ観察してみてはいかがでしょうか。