子育て論文研究室
テーマ解説 (最終更新 2026年5月15日) 5本の研究をもとに解説

幼児の自己コントロールを育てる関わり方——研究が示す3つの遊び

自己コントロールは、特別なトレーニングを足さなくても、遊びと日々のやりとりの中で少しずつ育つ力と考えられています。発達研究の知見をもとに、幼児期に家庭で意識したい関わり方をやさしく整理しました。

3つのポイント

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    「自己コントロール」は単一の力ではなく、衝動を抑える・頭を切り替える・感情を整えるといった複数の脳の働き(実行機能と感情調整)が結びついて育つものだと考えられています。

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    マインドフルネスを取り入れた遊び、リズム遊び、ルールのある運動遊びなど、楽しみながら続けやすい関わりが幼児期の自己コントロールの練習につながりうると、3つのランダム化比較試験で報告されています。

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    衝動を抑える力(抑制制御)は、長い時間をかけて育つ力です。「待てない」「やめられない」を意志の問題と捉えすぎず、家庭で気にかかる状態が続くなら、迷わず相談につなげてください。

「順番が待てない」「やめどきを切り替えられない」「気持ちが高ぶると手が出てしまう」。幼児期のお子さんと過ごしていると、自己コントロールの力をどう育てればよいのか、悩む瞬間があるのではないでしょうか。

このページでは、自己コントロール(研究上は「自己制御」「自己調整」とも呼ばれます)という言葉を少しほぐして、幼児期にどんな力が育っている最中なのかを発達研究の知見から整理します。一方で、「○歳までにこうあるべき」といった目安や、特定の発達特性の見分け方には踏み込みません。気になる様子が続いている場合は、最後にある「専門家に相談する目安」も参考にしてください。

何がわかっているか

自己コントロールは「ひとつの力」ではない

自己コントロールは、ひとつの能力ではなく、いくつかの心の働きが組み合わさったものです。発達心理学では、衝動を抑える力、頭を切り替える力、情報を一時的に覚えておく力をまとめて実行機能と呼び、これらが感情のコントロールと密接に絡みあいながら育っていくと考えられています。

研究記事 発達心理学

『感情のコントロール』と『頭の切り替え』はつながっている?子どもの実行機能と自己制御の深い関係

頭の切り替えや計画を立てる力(実行機能)と、自分の感情をコントロールする力(感情の自己制御)には、非常に強い関連があることが分かりました。

子どもと青年531名を対象としたこの研究では、実行機能と感情の自己制御のあいだに非常に強い関連が報告されました。横断的な調査なので「どちらが原因か」は断定できませんが、「気持ちのコントロール」と「考えのコントロール」は別物ではなく、互いに支え合っている力だと捉えてよさそうです。

育つには時間がかかる

衝動を抑える力(抑制制御)は、脳の前頭前野が担っており、長い時間をかけて育ち続けることが、発達神経科学の知見として広く知られています。幼児期は、その途上のごく早い段階にあたります。

研究記事 神経科学

「やめられない」を科学する――抑制制御と脳刺激研究が子育てに教えてくれること

「わかっているのにやめられない」背景には、脳の前頭前野がつかさどる抑制制御の弱さが関わっていることが改めて注目されています。

この研究は成人の依存症に対する臨床試験のプロトコル(計画書)で、子どもへの介入を示すものではありません。ただし、そこで前提とされているのは「大人でも抑制制御は完璧ではない」という事実です。幼児期の「やめられない」「待てない」は意志の弱さではなく、脳が育っている途中である、と捉え直す背景の手がかりとして補足的に参照しました。

遊びを通じた育ちの研究

幼児期の自己コントロールを伸ばす関わりとして、近年は遊びを通じた介入のランダム化比較試験(RCT)が少しずつ蓄積されています。ただし、いずれもサンプル数や効果量は控えめで、「これさえやれば伸びる」とまでは言えない段階です。代表的な3本を順に見ていきます。

研究記事 発達心理学5〜6歳

遊びで育む「心のしなやかさ」―マインドフルネスが就学前の子どもの感情コントロールと実行機能を伸ばす

遊びを取り入れたマインドフルネス・トレーニングは、就学前の子どもの「心の回復力(レジリエンス)」を高める効果が示されました。

5〜6歳の40名を対象にした RCT では、「今、ここ」の感覚に意識を向けながら遊ぶプログラムを受けた子どもたちで、感情調整スキルや実行機能のスコアが向上したと報告されています。サンプルサイズは小さいので結果を一般化しすぎることはできませんが、特別な道具を使わなくても日々の遊びに少し工夫を足すことで自己コントロールの練習になりうる、という示唆は家庭で取り入れやすい視点です。

研究記事 発達心理学4〜5歳

リズム遊びが「待つ力」を育む?香港の研究が示す、身体を動かすことのシンプルな効果

香港の4〜5歳の子どもたちを対象に、リズムや動きを取り入れた遊びが自己調整能力に与える影響を調べました。

香港の幼稚園で4〜5歳の子ども286名を対象にした RCT では、音楽に合わせて動いたり合図で止まったりする「リズム遊び」を8週間続けたグループで、衝動を抑えたり指示に従ったりする力が伸びたと報告されています。ただし、その効果量は統計的には「小さい」サイズに分類されており、リズム遊びをすれば自己コントロールが一気に伸びる、という話ではありません。それでも、楽しみながら続けやすい遊びが自己コントロールの練習になりうるという視点は、家庭の毎日に取り入れやすいヒントです。

研究記事 発達心理学4〜6歳

ただの外遊びより効果的? ルールのある運動遊びが子どもの「頭のメモ帳」を育む

4〜6歳の子どもを対象に、ルールのある運動と自由な外遊びの効果を比較しました。

4〜6歳の80名を対象にした RCT では、12週間にわたって「ルールのある運動遊び」を続けた子どもたちで、情報を一時的に覚えておく力(ワーキングメモリ)が、自由な外遊びをしたグループに比べて大きく伸びました。ただし同じ研究では、抑制制御や認知の柔軟性については明確な差は見られませんでした。「運動の種類によって伸びる力が違うかもしれない」という視点で読むのが正直なところで、「これさえやれば自己コントロールが全部伸びる」という単一の正解は、現時点では出ていません。

家庭でできること

毎日の暮らしのなかで、無理なく取り入れやすい関わりを、研究の知見と結びつけて整理してみます。

「今、ここ」に意識が向く声かけを混ぜてみる

粘土をこねながら「指先、どんな感じがする?」、お散歩で「風の音、聞こえるかな?」など、五感に意識を向ける問いかけを少し足してみてください。就学前マインドフルネスの研究では、こうした「今、この瞬間」に意識を向ける遊びが、感情のコントロールや実行機能の練習になりうることが示唆されています。

音楽に合わせて「動く・止まる」を遊びに

好きな曲を流して一緒に踊り、途中で止めて「ストップ!」と動きを止める。動物のまねっこをして、合図で切り替える。こうした「動く/止まる」の切り替えには、衝動を抑えたり指示に注意を向けたりといった、自己コントロールの要素が自然に含まれています。

「ちょっとしたルール」を遊びに足す

「先生の動きをまねしてね」「赤と言ったら赤いものを触ろう」「後出しじゃんけんで負ける手を出してね」。指示を覚えておきながら体を動かす遊びは、頭のメモ帳(ワーキングメモリ)の練習になります。完璧にできることよりも、「思い出しながらやってみる」プロセスを一緒に楽しむ姿勢が大切です。

感情に寄り添ったうえで「次の一手」を一緒に考える

気持ちが高ぶった場面では、「悲しかったね」「悔しかったね」と気持ちを言葉にしてから、「あと何回やったら交代する?」「タイマーが鳴るまで一緒に待ってみる?」といった、具体的な切り替えのヒントを添えてみてください。感情と実行機能は強く結びついている、という研究の示唆を、日々の関わりに置き換えた形です。

「やめられない」を“発達中”として見守る

抑制制御は、大人でも完璧ではない長期発達の力です。叱るより前に「この子の前頭前野はまだ工事中なんだな」と一呼吸おくこと、それ自体が家庭の関わりを穏やかに保つうえで意味のあるアプローチです。

逆に、家庭で意識しなくてよいことも添えておきます。「ほかの子はもう順番が守れるのに」と平均値と比べて一喜一憂したり、ひとつの場面で「自己コントロールがある/ない」を判定しようとしたりする必要はありません。自己コントロールの育ちは凸凹していて、得意な場面と苦手な場面が同居しているのが普通です。

専門家に相談する目安

自己コントロールが育っている途中である幼児期には、待てない・切り替えられない・気持ちが高ぶりやすい、といった姿はある程度ふつうのことです。一方で、本人や周りが困っている度合いが大きくなってきたときは、相談につなげることで関わりかたの選択肢が増えることがあります。迷ったら相談する、で構いません

具体的な「年齢」や「回数」を基準にするよりも、ご家族のなかで気にかかってきたタイミングを大切にしてみてください。たとえば次のような感覚があるときは、保育園・幼稚園の先生やかかりつけの小児科医、自治体の発達相談窓口などに、一度声をかけてみるのが安心です。

  • 順番を待てない・切り替えが難しい・衝動的に動いてしまう様子が、家庭でも園でも気になる期間が長くなってきた
  • 本人がそのことで自信を失いかけている、または家族との関わりがつらく感じられるようになっている
  • かんしゃくや気持ちの高ぶりが激しく、家庭での工夫だけでは難しいと感じている
  • 周りの子とのトラブルにつながりやすく、本人やご家族の困りごとが増えてきている

「診断をつけるため」だけが相談の理由ではありません。「気になったから話を聞いてもらう」だけで十分な相談理由です。早めに話してみることで、家庭で続けていく関わりの輪郭が見えてくることもあります。

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発達心理学 correlational study

『感情のコントロール』と『頭の切り替え』はつながっている?子どもの実行機能と自己制御の深い関係

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