子どもの集中力はどう育つ? 研究から考える、家庭でできること
集中力は生まれつきの性格と決まっているわけではなく、生活の中で少しずつ育っていく力と考えられています。発達研究の知見をもとに、「うちの子は集中力がない」と感じたときに家庭で意識したい関わり方をやさしく整理しました。
3つのポイント
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「集中力」は実行機能と呼ばれる脳の働きの一部で、生まれつきの性格というよりも、経験を通じて少しずつ伸びていく力だと考えられています。
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家庭での「いつもの流れ」「体を動かす遊び」「眠りの質」などが、複数の研究で集中の育ちと関連すると報告されています。
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「○歳まではこうあるべき」を気にしすぎるより、家庭で気にかかってきたタイミングを大切に。長く続くようなら、迷わず相談を。
「絵本も最後まで聞いていられない」「遊びがすぐ次に移ってしまう」。同年代の子と比べて、つい「うちの子は集中力がないのかも」と感じてしまう瞬間は、多くのご家庭にあるのではないでしょうか。
このページでは、「集中力」という言葉を少しほぐして、発達のなかで何が育っている最中なのかを研究をもとに整理します。一方で、「○歳までにこうあるべき」といった目安や、特定の発達特性の見分け方には踏み込みません。気になる症状がある場合は、最後にある「専門家に相談する目安」も参考にしてください。
何がわかっているか
そもそも子どもの「集中力」は、ひとつの能力ではありません。発達心理学では、注意をコントロールしたり、衝動を抑えたり、頭を切り替えたりする力をまとめて実行機能と呼びます。これは生まれつきの性格と決まっているというよりも、脳が育っていく過程で経験を通じて少しずつ伸びていく力だと考えられています。
集中の育ちに、家庭での「いつもの関わり」がどう関わるか。乳児期から5歳までを追いかけた縦断研究で、興味深い知見が報告されています。
「次は何?」がわかる安心感。ママの“いつもの”が、子どもの集中力を育む
母親の声かけや触れ方などの関わりが「いつもと同じ」で予測できるほど、子どもの実行機能(集中したり、頭を切り替えたりする力)が健やかに育つことがわかりました。
この研究では、母親(あるいは主な養育者)の声かけや触れ方が予測しやすい環境で育った子どもほど、集中したり頭を切り替えたりする力(実行機能)が健やかに伸びる傾向がみられました。原研究で測定されたのは母親のシグナルですが、日々のお世話に一定のリズムがあること自体が大切、という観点では、お世話に関わるご家族みなさんに通じる示唆かもしれません。「ちゃんと教え込む」ことよりも、日々のやりとりに一定のリズムがあることのほうが、集中の土台になっているのかもしれません。
身体を動かすことと集中の関係についても、複数の知見が積み重なってきています。
たくさん走る子は、頭の切り替えも上手? 運動が「実行機能」を伸ばす科学的根拠
持久走などの有酸素運動をよくする子は、集中力や思考の切り替えといった「実行機能」が高い傾向にありました。
3〜6歳を対象とした20件の研究をまとめたシステマティックレビューでは、心肺機能の高さ(有酸素運動能力)と実行機能の高さに一貫した関連がみられました。たくさん走ったり、息が弾むくらいの遊びをよくしている子どもほど、集中したり考えを切り替えたりする力が育ちやすい、という傾向です。
音楽やリズムを取り入れた介入研究もあります。
リズム遊びが「待つ力」を育む?香港の研究が示す、身体を動かすことのシンプルな効果
香港の4〜5歳の子どもたちを対象に、リズムや動きを取り入れた遊びが自己調整能力に与える影響を調べました。
4〜5歳を対象としたランダム化比較試験で、音楽に合わせて動く遊びを8週間続けた子どもたちは、衝動を抑えたり指示に従ったりする力が伸びたと報告されています。なお、この効果量は統計的には「小さい」とされており、リズム遊びをすれば集中力が一気に伸びるという話ではありません。それでも、楽しみながら続けやすい遊びが、自己コントロールの練習になりうるという視点は、家庭の毎日に取り入れやすいヒントです。
身体だけでなく、休息のとり方も集中に関わっているようです。
ぐっすり眠る子は、頭の切り替えが上手?——睡眠と「心の司令塔」の発達的関連
7歳から12歳の子ども170名を対象に、睡眠の質と「頭の切り替え」などの能力(実行機能)との関連を調査しました。
7〜12歳を対象とした研究では、子ども自身が「ぐっすり眠れた」と感じているほど、衝動を抑えたり考えを切り替えたりする力のスコアが高い傾向がみられました。学童期の知見なので未就学期にそのまま当てはまるとは言い切れませんが、「眠りの量」だけでなく「眠りの質」という見えにくい背景が、集中のしづらさに関わりうる、という視点は知っておいて損のないところです。
メディアとの付き合い方も、注意機能との関連が指摘されています。
ショート動画、子どもの「集中力」とどう関係? 年齢が低いほど影響が大きいとの報告
短い動画(ショート動画)をよく見る6〜12歳の子どもは、集中力が続きにくい「不注意」な傾向が強いことが分かりました。
6〜12歳の子どもを対象に、ショート動画の視聴と「不注意」の傾向との関連が報告されました。年齢が低い子どもほどその関連が強かったことから、注意の機能はまさに発達の途上にあり、日々の環境の影響を受けやすい時期があることがうかがえます。これは学童期を対象にした調査ですが、注意の機能が育ちの途中である点では、乳幼児〜未就学期にも通じる視点と言えそうです。
一方で、こうした研究の多くは「関連がある」ことを示すもので、「○○すれば集中力が伸びる」「○○のせいで集中できない」と一方向に断定できるわけではありません。集中の現れ方は子どもごとに大きく異なるため、現時点では「これさえやれば大丈夫」という単一の正解は出ていない、というのが正直なところです。
家庭でできること
毎日の暮らしのなかで、無理なく取り入れやすい関わりを、研究の知見と結びつけて整理してみます。
「いつもの流れ」をひとつだけ大切にする
朝の挨拶、お風呂上がりの歌、寝る前の絵本など、ささやかな”お決まり”をひとつ続けるだけでも、子どもにとっては予測しやすい安心の手がかりになります。完璧さよりも続けやすさが大切だ、というのが先ほどの縦断研究の示唆です。
「受動的な時間」と「能動的な時間」のバランスを意識する
ショート動画や次々と展開する映像は、年齢が低い時期ほど注意機能との関連が指摘されています。視聴を完全に止める必要はありませんが、見たあとに自分で手や体を動かす遊び(ブロック、お絵描き、ごっこ遊び)に誘ってみると、自分から集中をつくり出す時間を増やしやすくなります。
体を動かす時間を、短くてもいいから日常に
「公園で5分だけ思い切り走る」「音楽に合わせて踊る」など、息が少し弾むくらいの活動で十分です。有酸素運動やリズム遊びと実行機能との関連は、複数の研究で一貫して報告されています。
眠りの「質」を少しだけ意識する
寝る前に部屋を少し暗くして静かな時間を持つ、布団に入ってから一日の楽しかったことをひとつだけ話す——「量」よりも「気持ちよく眠れたか」に目を向けるアプローチです。
「集中できなかった日」を責めずに眺める
体調や眠り、その日に見た映像など、集中のしづらさには多くの背景があります。一日単位で評価するのではなく、「最近、どんな場面なら没頭できているか」を週単位で振り返るほうが、その子の集中のスタイルが見えてきやすくなります。
逆に、家庭で意識しなくてよいことも添えておきます。「机に向かって座っていられる時間」を年齢の平均値と比べて一喜一憂したり、集中を切らした瞬間に強く叱って”集中させよう”としたりするのは、研究面でも積極的に支持されにくく、子どもの安心感を損ねる可能性のほうが高いと考えられます。
専門家に相談する目安
「集中力がない」と感じる背景には、年齢相応の発達の途中である場合もあれば、もう少し丁寧に見たほうがよい場合もあります。迷ったら相談する、で構いません。家庭の関わりで十分カバーできる範囲なのか、もう少し専門的なサポートを足したほうが本人がラクになるのか——その見立てを一緒に作っていくのが、相談という場の役割です。
具体的な「年齢」や「期間」を基準にするよりも、ご家族のなかで気にかかってきたタイミングを大切にしてみてください。たとえば次のような感覚があるときは、保育園・幼稚園の先生やかかりつけの小児科医、自治体の発達相談窓口などに、一度声をかけてみるのが安心です。
- 集中のしづらさが家庭でも園でも気になり、ご家族の中で「気になる期間が長くなってきた」と感じている
- 集中できないことで本人が困っていたり、自信を失いかけているように見える
- 指示が通りにくい・衝動的に動いてしまう・待つことが難しいといったようすが、本人やまわりの困りごとにつながってきている
- 寝つきや目覚めのリズムが整いにくく、家庭での工夫だけでは難しく感じる
「診断をつけるため」だけが相談の理由ではありません。「気になったから話を聞いてもらう」だけで十分な相談理由です。早めに話してみることで、家庭で続けていく工夫の輪郭が見えてくることもあります。
次に深く読むなら
「次は何?」がわかる安心感。ママの“いつもの”が、子どもの集中力を育む
母親の声かけや触れ方などの関わりが「いつもと同じ」で予測できるほど、子どもの実行機能(集中したり、頭を切り替えたりする力)が健やかに育つことがわかりました。
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5件- 発達心理学0〜5歳 longitudinal
「次は何?」がわかる安心感。ママの“いつもの”が、子どもの集中力を育む
母親の声かけや触れ方などの関わりが「いつもと同じ」で予測できるほど、子どもの実行機能(集中したり、頭を切り替えたりする力)が健やかに育つことがわかりました。
- 発達心理学3〜6歳 systematic review
たくさん走る子は、頭の切り替えも上手? 運動が「実行機能」を伸ばす科学的根拠
持久走などの有酸素運動をよくする子は、集中力や思考の切り替えといった「実行機能」が高い傾向にありました。
- 発達心理学4〜5歳 RCT
リズム遊びが「待つ力」を育む?香港の研究が示す、身体を動かすことのシンプルな効果
香港の4〜5歳の子どもたちを対象に、リズムや動きを取り入れた遊びが自己調整能力に与える影響を調べました。
- 発達心理学7〜12歳 correlational study
ぐっすり眠る子は、頭の切り替えが上手?——睡眠と「心の司令塔」の発達的関連
7歳から12歳の子ども170名を対象に、睡眠の質と「頭の切り替え」などの能力(実行機能)との関連を調査しました。
- 発達心理学6〜12歳 cross-sectional survey
ショート動画、子どもの「集中力」とどう関係? 年齢が低いほど影響が大きいとの報告
短い動画(ショート動画)をよく見る6〜12歳の子どもは、集中力が続きにくい「不注意」な傾向が強いことが分かりました。