すくすくベリー研究所
発達心理学

「うちの子、癇癪がひどいかも…」と感じたら。感情コントロールの発達と家庭でできること

📄 Prevalence and Correlates of Emotion Dysregulation in Children: Results from the ABCD Study.

✍️ Koleilat, R., Sabalbal, A., Baroud, E., Shamseddeen, W.

📅 論文公開: 2026年1月

感情コントロール 非認知能力 社会情動的スキル 睡眠 家庭環境

3つのポイント

  1. 1

    約10人に1人の子どもが、感情のコントロールに大きな難しさを抱えていることが示されました。

  2. 2

    感情コントロールの難しさは、特に男の子に多く見られる傾向がありました。

  3. 3

    家庭の社会経済的な状況や、子どもの睡眠の質が、感情の発達と深く関わっていることが分かっています。

論文プロフィール

  • 著者名: Koleilat, R., Sabalbal, A., Baroud, E., Shamseddeen, W.
  • 発表年: 2026年
  • 掲載誌: Journal of Affective Disorders Reports
  • 調査対象: Adolescent Brain Cognitive Development (ABCD) study に参加している子どもたち。これは、子どもの脳の発達と健康を長期的に追跡する、アメリカの大規模な研究プロジェクトです。
  • 調査内容: 子どもの感情コントロールの難しさ(感情失調)がどのくらいの割合で見られるかと、それに関連する要因(性別、家庭環境、睡眠など)を調査しました。

エディターズ・ノート

子どもの「癇癪」や「感情の爆発」は、多くの保護者の方が一度は悩むテーマです。「成長の一過程」と頭では分かっていても、あまりに激しいと「うちの子だけ…?」と不安になってしまいますよね。

今回ご紹介する論文は、感情のコントロールに難しさを抱える子どもが、実は決して少なくないこと、そしてその背景には様々な要因が関わっていることを、非常に大規模なデータから明らかにしてくれました。

この研究結果を知ることで、保護者の方の不安が少しでも和らぎ、お子さんの「感情の波」と向き合うための具体的なヒントが見つかることを願って、本論文を選びました。

実験デザイン

この研究は、何か特別なプログラムを実施してその効果を測る、というものではありません。

その代わりに、何千人もの子どもたちの膨大なデータ(ABCD Study)の中から、感情のコントロールが難しい子どもたちの特徴や、関連する生活習慣などを統計的に分析しました。いわば、「森」全体を上空から眺めて、どんな傾向があるのかを探るようなアプローチです。

調査の結果、以下のような点が明らかになりました。

  • 有病率: 全体の約9.9%の子どもが、感情のコントロールに中等度から重度の難しさを抱えていると判断されました。
  • 性差: 感情のコントロールに難しさを抱える子どものうち、約6割強が男の子でした。
  • 関連要因: 精神的な健康状態、家庭の社会経済的な状況、そして睡眠の問題が、感情のコントロールの難しさと深く関連していることが示唆されました。
感情コントロールに難しさを抱える子どもの割合(概念図) 0 18 36 54 72 90 割合(%) 90.1 特に問題なし 9.9 感情コントロールに難しさあり
感情コントロールに難しさを抱える子どもの割合(概念図)
項目 割合(%)
特に問題なし 90.1
感情コントロールに難しさあり 9.9
感情コントロールに難しさを抱える子どもの割合(概念図)

古典知見との接続

今回の研究で、家庭環境が子どもの感情コントロールと関連することが示されました。これは、心理学の古典的な理論ともつながる発見です。

例えば、イギリスの心理学者ジョン・ボウルビィは、子どもが不安やストレスを感じた時に「この人がいれば安心だ」と思える存在との間に築かれる特別な絆、 愛着(アタッチメント) の重要性を提唱しました。

この「安心の基地」があるからこそ、子どもは失敗を恐れずに新しいことに挑戦したり、嫌なことがあっても気持ちを立て直したりすることができます。つまり、安定した愛着関係は、自分の感情をうまくコントロールする力の土台となるのです。今回の研究結果は、この古典的な知見を現代の大規模データで裏付けるものと考えることもできます。


すくすくベリーとしての解釈

プロダクトの思想:行動ログを「感情の発達」のシグナルとして捉える

すくすくベリーは、お子さんの遊びや学びの様子をAIで解析し、一人ひとりに合ったフィードバックを提供します。この論文の知見は、私たちの設計思想の根幹に関わっています。

私たちは、お子さんの行動ログを単なる「正解/不正解」や「できた/できない」の結果としてだけ見ていません。例えば、パズルに取り組む中で「うまくいかなくてイライラする」「一度諦めたけど、また挑戦する」といった一連の行動は、まさに感情コントロールの発達段階を示す貴重なシグナルです。

この研究が示すように、感情の発達には睡眠や家庭環境など、様々な要因が関わります。将来的には、すくすくベリーが遊びのログと睡眠などの生活ログを組み合わせることで、「今日は少し眠そうだから、イライラしやすいかも?短時間で達成感を味わえる遊びを提案しよう」といった、よりパーソナライズされたサポートを提供できると考えています。

私たちは、お子さんの「感情の波」をデータを通じて静かに見守り、その成長を長期的に支援する。そんな伴走者でありたいと願っています。

ご家庭でできること:「気持ち」に名前をつけてみよう

この研究は、幼少期から感情をコントロールするスキルを育むことの重要性を強調しています。ご家庭で今日からできる、シンプルでとても大切な関わりがあります。

それは、お子さんの「気持ち」に名前をつけてあげることです。

子どもは、自分の中に嵐のように湧き起こる感情を、どう表現していいか分かりません。だから、泣いたり、叫んだり、物を投げたりしてしまうことがあります。

そんな時、「うるさい!」「やめなさい!」と行動を制止する前に、「そっか、悔しかったんだね」「びっくりして、ドキドキしちゃったね」と、その感情を言葉にしてあげてみてください。

自分の気持ちに「悔しい」「ドキドキ」という名前があることを知ると、子どもは自分の感情を少し客観的に捉えられるようになります。これが、感情に飲み込まれずに、うまく付き合っていくための第一歩になるのです。

読後感

感情のコントロールは、大人にとっても簡単なことではありません。だからこそ、子どもの頃から少しずつ練習していくことが大切なのかもしれません。

あなたのお子さんは、どんな時に自分の気持ちを言葉にするのが難しそうですか?そして、そんな時、どんなふうに手伝ってあげられそうでしょうか?